| 42歳の初体験 第4章 富士山 登山編 中編 |
公開日:2009/08/30
車に揺られること30分。私達は富士宮に向けて走っていた。

現場に近づくにつれて、段々と霧が濃くなってくるのが判った。御殿場はあんなに晴れていたのに。
しかし、雨が降っている訳ではなく、あくまで霧のみというのが唯一の救いだった。
7月25日 3:01pm 予定通りに車は富士宮登山口に到着。やや緊張している自分に気が付いていた。霧とは言え長時間さらされればずぶ濡れになるので車から降りると直ぐ、雨具を着込んで完全防備である。私はと言えば着ているウィンドブレーカーとパンツにタップリと防水スプレーを事前に塗布してある。正直、登山用の雨具は目が飛び出るほど高い。上下セパレートになっているセットが3万円とかするのだ。流石にこの1回のために3万円の雨具はあり得なかった。しかも、当日が晴れていれば出番もなくザックの中で肥やしに成り下がるのである。しかし、この考えが甘かったと気付くにはもう少し時間がかかった。
ここでいきなり登山開始!とはならない。30分ほどこの場に留まり、この高度の気圧や低酸素量に身体を慣らすのである。


先ずは五合目売店に行く。トイレと共に売店で売っている「金剛杖」と言う杖を購入するためだ。私はストックを持っているので必要ないのだが、他の4名はこの杖を使って山頂を目指すようだ。
ちなみに各合目には山小屋があり、有料だが杖に焼き印を刻んでくれる。旅の土産になるという寸法だ。

そして出発前に記念撮影。Aさんの旦那さんが撮影してくれた。
ここで今回の参加者を紹介しておこう。
先ずはHさん(写真向かって左から2人目)。今回、私を誘ってくれた方だ。そして、その息子さん(写真向かって一番左)。彼が言い出しっぺであると聞いている。
Aさん(写真中央)。Hさんのお友達で今回、登山口までの送迎を準備してくれた方だ。
Hくん(写真向かって右から2人目)。Aさんの義理の弟で富士宮口まで送ってくれたAさんの旦那さんの実弟になる。
そして私(写真向かって一番右)。ラーメン紀行の管理人。他事笑論のネタと言うことだけで山頂を目指すバカ者ですが何か?

3:40pm ここで旦那さんとはお別れ。いよいよ、登山開始である。

登山道に入ると直ぐ看板があった。標高2400m。山頂までの差は1376m。ちょっと気の遠くなる数値。見るんじゃなかったかも。しかし、昼の登山の目的地は標高2780m地点にある今回のお宿、御来光山荘までだ。その差380m。予定到着時刻は1時間半後だ。

登山道にはロープが張ってあり、基本的にはこのロープを頼りに進めば道を外れることはない。下界に向けてカメラを構えてみる。相変わらず霧が濃くて景色を楽しむ登山ではない。


4:00pm 出発して20分。六合目に到着した。意外と簡単に来てしまった印象を持った。前述した通り、各合目には山小屋があるのでちょっと休憩したりも出来る。しかし、たった20分では疲れもへったくれもない。特に休憩も取らずに先を急ぐことにした。



富士宮登山道にはなだらかな道もあれば険しい場所もある。こんな時はストックや金剛杖が役に立つ。こう言う場所は一気に高度が上がる訳だが、特に富士宮登山道は距離が短い代わりにこんな場所は多い。

たまにこんな大きな岩も見ることが出来る。直系1mはあるであろうか。先日起きた落石死亡事故もこのくらいの岩が落ちてきたらしい。しかも、トップスピードは200kmに達すると言う。正直、こんなもんが上から落ちてきたら覚悟を決めるしかないだろう。

4:27pm 出発から50分が経過した。実は写真では判り辛いであろうが今日は霧も濃いが風も強く、時折突風が吹き荒れる。こんな突風に煽られたら滑落も充分考えられる。時間的にも良い感じだったので風をやり過ごしながら休憩を取ることにした。
各々、水分補給をしたり行動食を食べたり。休憩は10分程度とした。前にも書いたが長い休憩は暖まった身体を冷やしてしまうからだ。

ここまでの登山で5名の隊列が自然発生的に出来てきた。それは体力差だったり年齢などで自然と決まったものであろう。
先頭は私。一応年長者で体力もそこそこ。次がHさんの息子さん。一番若いし現役学生なので一番体力がありそう。でも、先頭は切らずに私に着いてきた。3番目がAさん。噂ではアウトドアギャルだと聞いているが体力は未知数。4番目がHさん。多分、体力的には一番なさそう。最後がHくん。実は彼が一番、登山経験があり、富士山の八合目までは何度も登っている。今回はケツ持ちをかって出てくれているようだ。
先頭を行く私の使命は登山道の確認やペース配分。判りにくい分岐点などでは一度止まって後続メンバーを待ったり、メンバーの顔を見たり、声をかけたりして各自の疲れ具合を把握。休憩を入れるタイミングを考える。

途中に看板が見えてきた。新七合目まで残り300m。この「300m」が距離なのか、高度なのかは定かではない(多分、前者)が、あと少しで今回のお宿に到着である。



出発から1時間半。霧の中、遙か上方を望むと建物らしきものが見えてきた。登山道にある建物は山小屋以外はないので今日の目的地である御来光山荘であろう。
霧の中、段々とその形がハッキリしてくる度に安堵の気持ちが増幅して行くのが判った。

5:09pm 御来光山荘は前述したように標高2780m地点にある山小屋。今回のお宿である。先ずはここまで来れたことを祝して記念撮影。そして宿に入りチェックインする。

全身びしょ濡れなので雨具などは乾かすために宿に預ける。



靴とザックを入れる袋がもらえるのでそれぞれを入れて寝床まで持って行く。山小屋には部屋と言う概念はない。正に寝床である。全くプライバシーはない。5名が枕5個分しかないスペースに雑魚寝状態で身体を休める感じだ。


山小屋は多種多様な人々が利用している。小さな子供を連れた家族連れ。大学生らしき若者達、中年のおじさん、おばさん達。外国の方も多く見られ、スゴいことになっている。人種の坩堝と言うか、老若男女が入り混じっている不思議な空間である。外国の方が普通にカレーライスとか食べてるし…



6:00pm 個人的には山小屋一番の楽しみである夕食の時間だ。メニューは来る前から判っていたがカレー。そしてお茶が出た。あと、朝食用におにぎりと少しのおかずが入ったセットが渡された。朝食についてはここで食べるもよし、山頂で食べるもよし。山小屋を出発する時間が登山者によってまちまちなため、このような朝食になっているようだ。水も食材も全てこの標高まで上げる必要があるので、お茶一杯にもスゴい手間と言うか労力がかかっている。富士山の山小屋と言うのはそう言う場所である。
「青空が出てるぞ!」
ある宿泊客が言っているのが聞こえた。この山小屋に泊まっている全員が多分、富士山に着いてから一度も下界の景色を見ていないので下界の景色に飢えている。全ては濃い霧のせいだ。


私も外に出てデジカメを構えた。ラッキー!撮影に成功した。
私と同じようにデジカメを構える人たちの多いこと。しかし、この晴れ間は5分ともたなかった。
「ラッキーでしたね!」
思わず笑みがこぼれる。笑いながらお互いのラッキーぶりを称えた。今回の宿泊客はある意味、同じ思いを共有した同士であるのだと実感した。


食後。
メンバーみんなで今後のスケジュールを確認した。夜11時半起床。午前0時に山小屋を出発する。日の出は4時50分なので正味、4時間半くらいしかない。最低でも八合目を越えないと御来光は拝めない。また、時間に間に合ったとしても、このまま霧が続くと御来光は無理である。ある意味、行ってみないと判らない一発勝負みたいな感じではあるが皆、ここまで来て後には引かないであろう。
更にこの先の心配事と言えば高山病の発症である。一人でも体調不良が出れば下山を余儀なくされるからだ。
午後7時。早々に床について夜の再アタックに向けて鋭気を養うことにしたのだった。
(つづく)
