ある帰宅時の出来事 その2

公開日:2004/05/01

「もしもし!大丈夫ですか?」
こう言うときは大きな声でハッキリと言うのが鉄則、と言うか救急隊員などが患者に声を掛ける時もそうしていたのを思い出した。もちろん、テレビの影響は大きい。そう、私はテレビっ子。
すると彼女は少しだけ目を開いた。取りあえず意識はあるようだ。死体ではないので一先ずは自分の中に安堵の気持ちが広がったのを覚えている。
その女性、意識はあるのだが起きようとはしない。起きられないのかも知れないので無理に起こすこともしなかった。ついでに色々と話を聞いてみた。彼女の話を(())((つま))んで説明しよう。
彼女は今までカラオケに行っていたと言う事だった。少しお酒のような臭いもしていた。カラオケが終わり、帰宅すると鍵がないことに気が付いた。スペアキーは部屋の中。彼女は部屋に入れない訳だ。どうして倒れていたかと言えば、めまいがして頭がフラフラしたからだと言う。ちなみに彼女の倒れているのは自分のアパートの目の前だった。
Aさんも車から出てきて彼女の脇に寄り添っていた。
Aさん「どうします?」
「取りあえず部屋に入れないと話にならないので、大家に電話してみましょう」
もちろん、通りすがりの私とAさん。大家など知っている筈もない。仕方がないので彼女に聞いた。
「大家さんに鍵を借りられないかなぁ」
彼女「大家さん、この辺りには居ないんです。」
些か困った展開であるが、このアパートにはアパートを管理している不動産会社の看板が掲げてあった。
「不動産屋さんに電話してみますよ」
Aさんにそう告げた私は携帯で不動産屋さんへの電話を試みた。ちなみに不動産屋の看板は2枚。取りあえず一方の所へ電話してみた。
「すいません。○○町にある○○ってアパート、お宅で管理してらっしゃいますよねぇ。その○○号室の○○さんが鍵を無くしたらしくて、しかもアパートの前で倒れてらっしゃるんですよ」
電話「そうなんですか。すいませんがその方は私共でご紹介した方ではないので、もう一方の不動産屋さんに掛けていただけますか?」
仕方がないのでもう一方の不動産屋へ電話した。
「すいません。○○町にある○○ってアパート、お宅で管理してらっしゃいますよねぇ。その○○号室の○○さんが鍵を無くしたらしくて、しかもアパートの前で倒れてらっしゃるんですよ」
電話「そうですか、ちょっと確認しますね。…(沈黙)… ○○さんですね。確かに私どもでご紹介した方です。」
「鍵ってそちらで管理されてますか?」
電話「あいにく私どもの方では…。大家さんが持ってらっしゃいますので…」
「そしたら、そちらから大家さんの方へ連絡ってしていただけないでしょうか?どちらにしてもこのまま道端に放置も出来ませんので…」
電話「ちなみにあなたはどちら様ですか?」
「通りすがりの者です。」
電話「そうですか。判りました。それでは大家の方へは連絡してみます。ただ大家は静岡の方ですので。」
彼女が手にしていた携帯の番号を彼女から聞きだし、不動産屋へ連絡して鍵の件について何か判ったら電話をしていただく事として電話を切った。
「どうします?」
Aさん「どうしましょうかねぇ?」
このまま放置も出来ないし、でも、部屋は開かないし。連れて帰る訳にもいかないし。(って俺は歩きだし。Aさんがお持ち帰りか?)
悩んでいる所へ彼女の携帯が鳴った。番号が出ているだけでメモリ上の名前は表示されていないことから不動産屋だと思った私が携帯に出てみた。
「はい、○○の携帯です。どちら様ですか?」
聞き覚えのある声だった。
電話「どうも、先ほどの者ですが大家さんに連絡が着かないんですよ。困りました。どうしましょう?」
そりゃこっちが聞きたいよ。心の中で叫んだ。ただ現場に居るのは私たちなので私たちで何とかするしかなかろう。
「判りました。それでは引き続き連絡はお願いすると言うことで。彼女はこちらで何とかしますから」
優等生のような言葉が突いて出てきた。と言うかもうどっぷりハマっていて、何とかしなきゃ私も自宅に帰れやしない。
電話を切るとAさんとまた思慮する。
Aさん「交番が新清水駅の脇にあるから呼んでくるよ。」
Aさんは車に乗っている。私が行くより早いだろう。
「判りました。ではお願いします。」
Aさんは出て行った。その場所には私と彼女の2人きりとなった。

(つづく)

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