| バーの時間の過し方 好きなお酒を飲めば良い |
新型コロナウイルスの勢いの衰え、複数人での会食や飲み会が復活している昨今。
会社の飲み会の2次会としてバーを利用している方も多く見られるようになってきました。
昔は上司が行きつけのバーへ後輩を連れていき、若者がバーという世界を知り、いつしかその店の常連になっていく。
そんな風景がありましたが、今では過去の遺産となりつつありますね。
「飲みニケーション」という言葉はいつしか「アルハラ(アルコール・ハラスメント)」という言葉に置き換わり、世知辛い世の中になったなぁと思ったりもします。
とは言っても、それは会社によってまちまちな部分もあり、上司と共にバーに訪れる人がいない訳ではないです。
ただ、上司と呼ばれる人がバーという異世界を後輩に伝えるためにバーに入ったのか、単なる飲み会の延長だったり、「知り合いのバーにお金を落としてあげたい」と考えてバーを訪れたのかによっても、後輩が受けるバーの印象も違うのかな?とも思います。
連れて来られた後輩達は多分、初めてのバーなので何を頼んだら良いか判らないと思います。
上司と一緒なので緊張はしてないと思いますが、オーダーは別でしょう。
居酒屋とは明らかに違うお酒が多くある場所ですから。
上司に気兼ねなく、好きなお酒を好きなだけ飲めば良いのかな?と思いますし、上司もそう思っているでしょう。
ただ、今回お話するエピソードは、とても残念な結果となりましたが…
とあるバーでのこと。
バーテンダーと歓談しながらウイスキーを傾けていると、5名の団体客が訪れた。
その5名の内の一人はマスターを知っているようで、上司にあたる人。
「大人数で申し訳ない」と言いながらマスターと話をしていた。
ただ、そのバーはカウンター席から少し離れた場所にソファーを有したボックス席があるので、バーテンダーはその団体をボックス席に通した。
当然、男性ばかり5名の団体客なので話し声も多少大きいが、カウンター席から離れていることもあり、あまり気にならない。
ヘルプのバーテンダーがオーダーを取りにいき、その内容をマスターに告げている。
そそくさと準備を始めるマスター。
タンブラーを5つ用意し、全てのグラスにミントを入れ始める。
『えっ、もしかしてモヒート5杯なの?』
11月も中旬に入り、モヒートの時期には若干外れている時期に5杯分のミントがあるのだろうか。
そんな心配をしながら作業を眺めていた。
まぁ、口開けを同じメニューで合わせるのは判らないでもないが、それならハイボールのような簡単にできるメニューの方が早くて良いだろう。
ビルドで作られるカクテルではあるが、モヒートはそれなりに時間がかかるメニューである。
そんな飲み会も盛大に盛り上がっているご様子。
次のオーダーはどうなるのか、気になっている私。
バーテンダーが呼ばれ、2杯目のオーダーを取りにいく。
そのオーダー内容がこれまた「何で?」と思わせるものだった。
「マティーニ5つです」
準備に取り掛かるマスター。
マティーニを頼むってことは飲み会も終盤に入っているのだろう。
このバーのミキシング・グラスを過去に見た事があるのだが、所謂ガラス製の大型のものではなく、ステンレス製の小ぶりのミキシング・グラスだったと記憶している。
ショート・カクテルであるマティーニを5杯同時に仕上げるため、マスターは2つのミキシング・グラスを用意して対応していた。
シェイクで5杯もキツイけど、ステアで5杯も結構キツイ。
しかし、時間差ではなく同時にオーダーが入っているので余計にキツイだろう。
カクテル・グラスも同じものが5つもない中、少しつづ形の違ったグラスに注いでいる。
勿論、故意にやっているとは思わないけど、完全に「バーテンダー殺し」のオーダーである。
そんな飲み会も終わったらしく、上司の方がお会計をしている。
ヘルプのバーテンダーがグラスを下げてきたのだが、1杯のマティーニは飲み終わっているのに対し、4杯のマティーニはほぼほぼ残っていた。
マスターも少しガッカリした表情でそのグラスを見つめ、私に愚痴をこぼす。
どういう気持ちが働いて4名の後輩達が上司と同じオーダーとなったのかは知る由もない。
ただ、一つ言えるのは残すくらいなら好きなお酒を飲んだ方が良い。
ましてやマティーニという、飲み慣れない人には飲み辛さが尋常じゃないものを頼むのであればなおさらだ。
バーに限らず、飲食店に出入りするのであれば、作ってくれた方の事を思うくらいの配慮は必要である。

