バーの時間の過し方 バーで仕事の話をする

今回のコラムのお題は「バーで仕事の話をする」です。

以前、このコラムでご紹介した「バーでの会話 あれこれ(詳しくはコチラから)」でもお話しましたが、面識のないバーテンダーやお客との会話の糸口として「仕事の話をする」というシチュエーションは意外とあります。

ただ、業種によっては多くを話せない内容もあるのが仕事なので、あまり根掘り葉掘り聞いてしまうのは如何なものかと個人的には思います。

仕事の事をしゃべる時はその会話をバーテンダーを含む他のお客にも確実に聞かれているという意識を持つことが大切です。

私は一人飲みが多いのでバーで同僚と仕事の話をしたことはないのですが、仮に同僚とバーに来たとしても、折角のバーで仕事の話をするのは嫌です。日常の雑多を一時、忘れて酒を飲むのがバーだと思いますので。

そんな感じであくまで話の糸口として仕事の話をするのは悪い事ではないというご紹介だった訳ですが、たまにガッツリとバーで仕事の話をしている方達も見受けられます。

今回、何故こんな話をするかと言えば先日、とあるバーで完全にプレゼンに近い形でバーを利用されたお客様がいらっしゃったのでご紹介したいと思います。


とあるバーでのこと。

コロナ禍の現在の平日のバーというのはお客の数が更に少ない。

その日もバーテンダーと二人で話しながら飲んでいる時のことだ。

若者を中心としたお客様が来店した。しかも4名という大所帯。テーブル席もあるのだがこの日は給仕役のヘルプのバーテンダーが居ない事や店もガラガラだった関係もあり、バーテンダーは私から少し離れたカウンター席に誘導した。

普段着を着た2名とスーツ姿の2名。楽しそうに話をしている。

バーテンダーは一時、忙しくなりおしぼりやコースターチャームの準備をしてオーダー取りをはじめている。

「俺はカリラをロックで」

普段着の若者が注文を入れている。すると…

「じゃあ私も」と全てのオーダーがカリラのオン・ザ・ロックになった。

『いきなりオン・ザ・ロックってことは他で既に飲み食いは終わっているんだろうなぁ』などと思いながら、バーテンダーが用意する4杯のカリラのオン・ザ・ロックを見ていた。

提供が終わり、バーテンダーが私のところに戻ってきて会話の続きをはじめる。

4名客も談笑しているようで先ほどよりは少しだけ騒がしい店内。

そんな時間が5分程度過ぎた時のことだった。

スーツ姿のお客の一人がノートパソコンを広げはじめた。このオーセンティックな店内でスマホ以外の電子機器を見たのは初めてだった。

そして何やら仕事の話を始めたようだ。判らないながらも少し話を聞いた限り、どうもプレゼンのようだ。

私とバーテンダーは話を続けたがお互い、そのプレゼンの様子が気になって仕方ない。

というか、バーテンダーはその行為を止めるべきかを思案しているのだと思う。

ただ、この店の中に居るお客は常連の私だけ。そういう状況もあってか止める事はしなかった。

そのお客たちに改めて注目すると、4名の若者だと思っていたスーツ姿の一人は年の頃は40代。その40代がプレゼンをしている。

そうなるとこの4名の関係性が想像できるようになってきた。普段着の若者2名が顧客、スーツ姿の2名が業者という関係なのだろう。

会話の内容は流石に判らないのだがキーワードとして「サージカルドライバー」という単語が出てきた。

早速、スマホでサージカルドライバーを検索すると、インプラントという差し歯の治療で使用する器具の名称であることが判った。

『この普段着の若者は歯医者なのか?』

そんな想像が嫌でも出来た。

挙句の果てにはノートパソコンから音まで出している。

これには流石にバーテンダーも止めに入るのでは?と考えたがここまで制止しなかった手前もあって、そこもスルーした。

まぁ、バーテンダーはその店のルールブックなので、私は従うしかないのだが。

30分程でプレゼンは終了したが、その間に一組のアベック(死語?)も来店して、そのプレゼンを聞いている。

結局、2時間弱の滞在中、ラフロイグ2杯と赤ワイン4杯を追加で飲み、お会計はスーツ姿の方が支払っていった。


彼らの退店後。私とアベックの会話の中心は当然のようにそのお客達の話になる。

そりゃそうだ。オーセンティック・バーの店内でノートパソコンを広げてプレゼンをするなんていう愚行は見たことも聞いた事もないからだ。

そういう行為自体が他のお客の注目を集める結果へと繋がります。

仮にこの店内にその業界に携わる方が居たならば、そのプレゼンや話されている内容も理解できたであろうし、商売敵だとしたら、色々と厄介な状況になる可能性もある。

バーは静かな空間だけに、「会話を他人に聞かれているかもしれない」ということに注意を払う必要があります。

公開日:2020/08/30

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