| 小ネタ集 おもてなしの心 その2 |
私がこれまでバーで見たり、聞いたり、感じたりしたバーテンダーのお客への気配りやちょっとした気遣いを綴る「おもてなしの心」と題したこのコラムも今回で2回目になります。
今回のエピソードも実際に私がバーに通う中で体験した事を書いていきます。
エピソード1 バーテンダーの意外な仕事
あるバーでの事。
一人、カウンターで飲んでいるとあるお客がやってきた。この店でも顔なじみになっているのか、マスターと会話を始めている。
話は少し前にその方が来店された時に同席していた別の客の話になっているようだ。
「この前はスミマセン。彼、かなり酔っ払っちゃってて」
「いえ、私は構いませんがあの方、多分この店に来た記憶も無いと思いますよ」
既に他の店で飲んで酔っ払っての入店だったようで、そこから更に結構な量を飲まれたようだ。
「でも、もし、次回もあのくらい酔っ払って来られたら、ご入店をお断りするかもしれません」
マスターがそのお客に言っていた。その時、私はこんな事を考えていた。
『でも、他のお客に迷惑にならないなら飲んでくれるんだし、良いんじゃないの?』
そのお客様が帰った後、私は先ほど思った事を直接、マスターにぶつけてみた。
「折角、飲んでくれるのに入店を断っちゃうの?勿体ない気がするんだけど」
すると、マスターはこんな事を言ってました。
「折角、ご来店してもらっているのにこの店に来た記憶もないだろうし。もっとゆっくりとお酒とお店を楽しんでもらいたいんです。」
マスターは更にこう付け加えました。
「お酒を止めるのもバーテンダーの仕事です。お酒は人の命を落とす事のできるもの。だから、止めなきゃいけない時は止めるんです。」
バーテンダーの新たな仕事を垣間見た瞬間でした。
エピソード2 箸置き
あるバーでの事。
そのバーはチャームとして少しばかりの料理が出てくる事から箸と箸置きが必ず出てくる。
何度か通っている中で何回目の来店かは忘れたが私はある気遣いに気がついた。
私は左利きなのだが、差し出される箸置きの向きがちゃんと左利き用にセットされているのだ。
多分、初来店の時は右利き用にセットされていたのであろうが私自身もその当時の記憶は既にない。何度も通う内にバーテンダーの方で利き手を記憶して、何も言わずにスマートにそう言う事をやっているのだろうか。
写真にその向きを納めるためにそのバーに向うとやはり、左利き用にセットされる箸置き。
「スミマセン。写真撮っても良いですか?」と悪戯っぽくマスターに言うと「何を書こうとしているんですか?」と困惑するマスター。正直にその旨を伝えた。
話を聞くとやはり、ちゃんと意識してその点はやっていると言う。気付く客、気付かない客、それぞれ要るようだが別に気付かれようとやっている事ではなく、利き手用にセットした方が当然、食べ易いだろうと言う少しばかりの配慮がその中にはあるようだ。
そんな事があった翌日。
別のバーに行く用事があって訪れた時のことだ。
そのバーに行くのは通算で4回目。若いバーテンダーが仕切るショットバーである。
その店もチャームに料理が出る関係から箸と箸置きが必ず出てくるのだがそのバーでもちゃんと左利き用にセットされていました。
昨日の話をするとやはり、意識して置いているとの事。
お客の顔を見て、覚えて、利き手まで記憶するのですから並大抵の記憶力ではありません。
しかし、そのちょっとした気遣いに気が付いた瞬間、あなたは既にそのバーのお馴染みさんになっているのです。

