| スピリッツに関する話題 沼津蒸留所でクラフトジンが出来るまで |
先日、このコラムでもご紹介させていただいた地元沼津が誇るクラフトジンである「LAZY MASTER」。
沼津経済新聞(詳しくはコチラから)や沼津ジャーナル(詳しくはコチラから)など、地元の情報を発信しているサイトでも、今回のクラフトジンの販売について紹介されています。
先日のコラムの中でも書いているのだが、私がこのクラフトジンの存在を初めて知ったのは沼津市内のバー「Radio Station」のマスターからの話で、「知り合いが作ろうとしているクラフトジンをバー紀行で紹介できないか?」と相談を受けたのがきっかけ。
そして、別の日にそのバーでクラフトジンを製造する方にお会いすることが出来た夜。
クラフトジンを作る上での苦労とか、製造についてバーテンダーと3人で色々とお話をする機会があった。
私もウイスキーの製造工程だけは知っているので話自体にはついていけるのだが、実際にジンの製造工程についてはこれまで調べたことがなかった。
そこで、実際に蒸溜所が稼働した暁に所内を見学させて頂けないか?というお願いをしていたのだった。
勿論、このコラムにクラフトジンというものが出来るまでの工程をご紹介できればと思ったからだ。
これは不勉強な私のためでもあるし、読者の中にもクラフトジンがどのように作られるのか興味のある方が多いのではないかと思う。
流石に全くの無知識では話にならないので、先ずは事前にドライジンの製造工程を調べてみた。(詳しくはコチラから)
それが以下の通りだ。(以降、例図とする)
1.原料(雑穀や糖蜜)
2.糖化・発酵
3.連続式蒸留
4.ベーススピリッツが完成
5.ボタニカルの風味づけ
6.再蒸留(単式蒸留)
7.瓶詰め
以前、このコラムで「余市蒸溜所でウイスキーが出来るまで(詳しくはコチラから」という内容でウイスキーの製造工程をご紹介した事があるので併せて参考にして欲しいのだが、例図1~2まではウイスキーのそれと変わらない。
原料を粉砕、糖化させ、酵母を混ぜて発酵。アルコール分を含んだ「もろみ」と呼ばれる麦汁が出来る。
余市では単式蒸溜器で蒸溜するが、ドライジンはベース・スピリッツを96度に上げるため連続式蒸溜器を使用する点が違う。
以降の過程はそれぞれ、独自の順序を辿る。こんなところだろうか。
特筆する部分は蒸溜工程が2度ある点がウイスキーとは大きく違う部分であろう。
と言う訳で先週、ファースト・バッチの販売が終わったばかりの沼津蒸留所へ再び足を運んだのだが、この安直に覚えたドライジンの製造工程がクラフトジンとは大きく違うことを知ることになった。
約束の時間少し前に現地に到着した私。先ずはバーでお会いした小笹智靖さんとご挨拶。
そして、私も前述のネットニュースで知ってはいたのだが、共同代表である永田暢彦さんともお会いすることができた。
沼津蒸留所の建物は昭和43年に建てられ、10年ほど前までは人が実際に住んでいた民家をリノベーションして作られており、バーとして機能する「CHAMBER」という店舗の隣に入口がある。
初めて入ったそのスペースにはステンレス製の蒸溜器とドラム缶のようなタンクが置かれていた。
先ずはベース・スピリッツから質問を開始した。前述の製造工程を参考にしたサイトによれば、ベース・スピリッツは外部委託する蒸溜所が多いと書かれていたが、話を聞くと先ずはここから違う。
沼津市内にクラフトビールを扱う「リパブリュー」というお店(詳しくは食べログで)があるのだが、ここの醸造施設を使用して大麦100%の麦汁を作って頂いているらしい。
その麦汁を所内にある単式蒸溜器で蒸溜してベース・スピリッツを作るのだそうだ。
この単式蒸溜器がナカナカの優れモノで、色々と話は聞かせて頂いたのだが、企業秘密な部分も多くここでは書けない。もう、墓場まで持っていく覚悟である(笑)
ちなみにこの蒸溜器の熱源は都市ガスでボイラーを稼働させ、釜の中を通るパイプに蒸気を通して加熱する仕組み。1度に沸かせる容量は150㍑だという。
気化したアルコールは「冷却塔」と呼ばれる管で冷水によって液体へと戻っていく。
通常、縦型の冷却塔が多いらしいのだが、横型は珍しいらしく、製造元も初めて作った形だという。
出来上がったベース・スピリッツは前述のドラム缶様のタンク内に格納する。ちなみに容量は200㍑。
ベース・スピリッツの度数は47~8度。これが1度目の蒸溜で、例図4までが完了する。
蒸溜器を1度洗浄し、いよいよジンの製造工程の中で一番重要な例図5「ボタニカルの風味づけ」を行う。
LAZY MASTERにはジェニパーベリーのほか、地元沼津の柑橘類や草木が使用されている。
西浦みかん、戸田の橘、山椒、くろもじなど8種類。これらボタニカルをベース・スピリッツと共に蒸溜器内に戻し、1日置いた後に蒸溜することで2回目の蒸溜が行われるそうだ。
前述の製造工程を紹介するサイトの内容を引用すれば、ボタニカルの抽出方法は「浸漬法」ということになります。
ちなみにこの時に蒸溜器から出てくる液体の度数は72~3度。これをまたタンクに格納するのだが、この先の工程も沼津蒸留所独自の製法があった。
通常、この液体に加水をして度数を下げ、ボトリングすることで製品が完成する訳であるが、沼津蒸留所のクラフトジンはここからがまた違う。
2度目の蒸溜によって得られた液体に加水をして、目指す度数(LAZY MASTERでは45度)にした段階でタンク内で2週間、熟成を行うのだ。
これは一家言ある焼酎好きの方には有名な「前割り(もしくは先割り)」という飲み方がヒントになっている。
実は私が視聴しているYouTubeチャンネルでこの「前割り」を使用したハイボールを作る動画(詳しくはコチラから)を見ていた関係で知っていた用語なのだが、クラフトジンの製造工程を知る中でこの用語に出会うとは思わなかった。
アルコールと水が馴染む期間が生じることで、クラフトジンとしての完成度が上がるのであろう。
ウイスキーの製造工程の中で一番期間を有するのが「樽熟成」であるように、この沼津蒸留所のクラフトジンの製造工程で一番期間を有するのがこの「前割り」の期間なのである。
こうして出来上がったクラフトジンをボトリングしてラベルや蓋の封印をして完成である。
と言う訳で沼津蒸留所のクラフトジン、「LAZY MASTER」の製造工程は如何だったでしょうか。
今回のコラム取材を快く承諾して下さった株式会社FLAVOURの小笹さん。
そして小笹さんをご紹介くださったバー「Radio Station」のマスターにこの場を借りて御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
こうやって製造工程を思いながら飲むと、作っている人の情熱や苦労みたいなものが伝わってきますね。
地元沼津で販売されたクラフトジン、LAZY MASTER。皆さまにも是非、味わって頂きたい一本です。

