サービスとホスピタリティの違いとは
めんどころ しおのや
麺処 汐のや

photo

SHOP DATA
住  所静岡県静岡市駿河区敷地1-10-22
電話番号
営業時間11:00〜14:30(月〜日)
17:00〜21:00(月〜日)
定休日不定期
席数カウンター7 テーブル12
駐車場あり
緯度経度
(日本測地系)
N  34゚56'55.6''
E138゚24'44.0''
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最寄駅
取材日2016/09/22その他の情報...

メニュー

塩そば+味玉
750円
塩そば
650円
チャーシュー麺
900円
あさりそば
900円
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今日は木曜日。
シルバーウィークを楽しんでいる方もいらっしゃるだろうが、私はカレンダー通り。今日は秋分の日でお休みである。
実は勤務先からある荷物を持って帰らないといけないのだが、これを持ったまま帰宅するのはちょっと…という代物なので、車で静岡まで行く事を考えた。勿論、取材も兼ねての事だ。
今週末は会社のレクレーションと会議の予定が入っており、昼の取材は絶望的な状況であると言うのも静岡への取材を後押ししている。
勤務先が静岡市内とは言っても、静岡駅から遠く離れた店を平日に取材する事は難しい。なので、こういう機会というか、こういう動機がないとナカナカ難しい。昔はもっとフットワークが軽かったように思うが、住宅ローンが重くのしかかるとナカナカ…というのが現状だろうか。
話が逸れた。
自宅を出発して40分。
東名高速の清水ICを下線した車は静大方向に舵を取っていた。
今回、取材する店は今年の1月頃にオープンした店。なかなか評判のよい店である。
大谷街道も久しぶりだ。何だか大学生が多く歩いている。当たり前か。大学の近くなんだから。でも、休日にキャンパスに行く用事ってあるのだろうか。
そうこうする内に店に到着したようだが何だか様子がおかしい。人の気配もないし、暖簾もかかっていない…。
『久しぶりにやっちまったか?』
折角来たので車を降りて外観を撮影。久しぶりのリカバリーだ。
まぁ、私も取材歴が長いのでリカバリー候補はいくつかある。ひとつはトマトラーメンな店。この店がこの場所から一番近い店だが、トマトラーメンって先週もそうだったよなぁ?という事でパス。
もう一軒は塩ラーメンが美味い店らしいが、サッパリラーメンっぽいのであまり気乗りがしていない。しかし、背に腹は代えられないので早速、現地に向かった。

その店を「麺処 汐のや」といった。2013年12月のオープンで、この年末で3年になろうとしている店だ。2013年12月と言えばラー紀は更新を停止していた頃で、取材どころではなかった時期だったと当時を思い出す。未だ店は営業しているのであろうか。
その考えも杞憂だったようで店はあった。正直、中心街から離れた静岡市内ってあまり土地勘がなく、「ここってどこなの?」って感じだ。店先に駐車場があるので入庫後、店先に向かう。外観を撮影して早速、店内へ。
店内に入ると左手に券売機が見えた。前述通り、塩ラーメンがウリの店なので今回は左上の法則に従う。オーダーは食券制。塩そば、味玉をオーダーした。
店内は厨房をL字に囲うカウンター席とテーブル席の構成。店員によってカウンター席に通された。
カウンター席は3対4に別れるL字型。4名側には既に先客がいる。私の前に居た親子は3名席側に。私は4名席側の端に陣取った。
厨房観察は調理場にあるうず高く詰まれた麺箱に遮られているが何とか出来そうだ。麺箱には「菅野製麺所」と書かれているが聞き覚えのない製麺所だ。寸胴の数は大型の物が1器のみ。麺茹では深ざるである事が判る。
ラーメンを待っている間、老夫婦と小さな子供の3名が入ってきた。爺さん、婆さんと孫と言った所だろう。
昼時の店内は満席に近いが、カウンター席は私の隣に2席。前述の親子連れの隣に1席空いている。私が1席移ればカウンターに3席の連席が出来る。
「移りましょうか?」
若い店員に告げて親子連れの隣の席に移る。そして、例の孫を連れた老夫婦は一度はカウンター席に着席したが、テーブル席が空くと早々にテーブル席へと移っていった。
『移る必要なかったか?』
昔、電車の中で妊婦さんに席を譲ろうと声を掛けたが丁重にお断りされた時の何とも言えない切なさと同じようなものを覚えた。
そうこうする内にラーメンがやってきた。先ずはスープからすすってみた。
ベースのスープは鶏ガラを軸にした清湯スープ。表層に浮かぶオイルの香りが良く、塩梅も気持ち強く仕上げている。見た目が淡麗系のラーメンってとにかくアッサリしており、塩味も抑えられて物足りない印象を抱く場合が多いが、このラーメンにはそういう印象がない。シッカリとした塩味は動物系の出汁感を呼び出す呼び水の如くコクを引き出し、満足感を与える。三島の藤堂に通ずる印象が残る。
麺は細縮れ麺。かん水の量は多め、加水率はやや高めの印象を持った。シッカリとした縮れは若干、啜り心地をスポイルするが、スープの持ち上げは良い。前述通り、菅野製麺謹製。
具はチャーシュー、メンマ、ほうれん草、なると、のり、ネギ。そして別注の味玉。チャーシューは豚バラ肉使用の茹で豚。脂身が固めに仕上がっており美味。味玉は塩味なのだがトロトロの黄身が美味い。この味つけは他にあまり類を見ない。
食後。店を出ると先ほどの若い店員が追いかけてきた。
「席を移っていただき、ありがとうございました。店主が味玉をサービスさせて下さいと申しております」と100円玉を持ってやってきた。
勿論、そんなつもりで席を移った訳ではないので丁重にお断りをしたのだが、彼の立場的にも店主からの申しつけなので引くことも出来ず、何度かの押し問答の末、こちらが折れる形で100円玉を受け取った。
席を移った事を店主に彼が伝えたのか、店主自身が私を見ていたのかは判らないが、こんな小さな出来事にも誠意を持って対応する「サービスの質」とは違う、「ホスピタリティ」という部分の高さを物語る一場面だった。
そして、それは店の繁盛振りを見ても明らかだった。

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